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WORLD

欧州から「資本」が逃げ出した

EU経済に回復の兆しなし

2013年4月号

ユーロ危機が続くヨーロッパで、域外資本の撤退が深刻化している。コスト高に加えて、欧州各国の硬直的な労働法制や、頑迷な労働組合の存在も主因の一つだ。フランスや南欧各国の製造業は、総崩れの危機に瀕しており、欧州経済は一段と冷え込む見通しだ。 労組の傲慢の帰結  パリから北へ百三十キロ余りの小都市・アミアン。世界遺産登録の大聖堂が、市民十四万人の自慢である。凜とそびえる大聖堂とソンム川に流れる運河網は、中世の趣を漂わす。  ここから車で十分も行くと、風景が一変し、米グッドイヤー社のタイヤ工場が広がる。「アミアン北」と「南」工場。このうちの北工場が、欧州製造業危機の最前線だ。米本社が年初に工場閉鎖を決め、共産党系労組「CGT」の組合員を中心に激しい争議を展開している。労組は三月には、パリ郊外にあるグッドイヤー仏本社のビルにまで押しかけ、タイヤを燃やして暴れ、機動隊と衝突した。 「グッドイヤーは北、南両工場に、『労働時間を柔軟に動かすなら、雇用を維持する』と提案し、穏健派労組主体の南は受諾し、北が拒否した。南は約束通り雇用を維持した。北工場閉鎖は、労組の傲慢・・・