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政治

《罪深きはこの官僚 》原田保夫 内閣府政策統括官(防災担当)

「南海トラフ被害予測」を膨らませた責任者

2013年4月号

 東日本大震災から二年が経過し、この経験をどのように活かすのかという問いは、「地震大国日本」に常に突きつけられている。

 三月十八日、内閣府は将来起きる南海トラフ地震の被害想定を発表した。その額約二百二十兆円。地震の揺れや、津波による直接被害は百六十九兆円、東日本大震災のぴったり十倍に上ると試算した。この結果について全国紙政治部記者が語る。
「あれもこれもと被害を積み上げたもの。とにかく被害額を大きくすることを目的にしたようだ」

 ここまで大きな数字が出た理由は二つある。一つ目は、「想定外」の事態を招かないため。むしろ大きく予測しておけば外れることはないだろうという無責任な計算だ。
「もう一つの理由は、自民党が進める国土強靭化計画の流れだ」

 国土交通省担当記者はこう語る。自民党が主導して進める国土強靭化計画法案が国会に提出されるのに合わせるかのようなタイミングで巨額被害予測が出てきたのは偶然ではないという。

 今回、被害を想定した中央防災会議を取り仕切っているのは、内閣府の防災・・・