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社会・文化

「文化輸出」後進国ニッポン

貿易自由化交渉の隠れた「焦点」

2013年5月号

 去る四月十五日から十九日にかけて、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)締結に向け、ベルギーのブリュッセルで第一回交渉が行われた。一昨年から昨年にかけて十分な事前協議を経ていることもあり、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に比べてメディアの論調も穏やかだ。  だが同時に、報道がやや紋切り型である印象もまた否めない。いわく、「日本側の関心は自動車や電子機器のEU関税撤廃、EU側の関心は日本独自の安全規制や政府調達の開放等の非関税障壁の撤廃」。あたかも、《工業製品を主戦場とする「関税」対「非関税」》というトポスがあらかじめ設定されているかの如くである。  しかし、貿易自由化交渉においては「文化輸出」の側面を忘れてはならない。実際、ハリウッドの名だたる映画配給会社が加盟する業界団体「米国映画連盟」(MPAA)は、昨年十月にロナルド・カーク米通商代表に詳細な報告書を提出し、貿易自由化による米国産コンテンツの輸出拡大を要求している。時期的にも内容的にも、これが欧米自由貿易協定(FTA)やTPPの交渉を念頭に置いたものであることは明らかだ。  今やハリウッドの映画と同・・・