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経済

浮上する トヨタ「F1復帰」説

章男社長がのめり込む「危険な遊戯」

2013年5月号

 世界の自動車業界関係者の間で、ある「噂」が駆け巡っている。「トヨタ自動車がフォーミュラ・ワン(F1)に復帰する」というのだ。このところの急激な円安という追い風による業績の「改善」を受けて、自社イメージ向上のために自動車レースの最高峰であるF1に再挑戦する―。だが、周知の通り、トヨタには巨額の経費負担に耐えられずF1から撤退した過去がある。政府主導の「金融操作」による円安という「神風」に浮かれ、早くも痛恨の歴史を忘れるかのような復帰説が浮上していることに、社内外からトヨタの「慢心」を危惧する声も聞こえてくる。

ホンダへの対抗心が最大の動機

 二〇〇二年にF1に初参戦したトヨタが、リーマンショックと品質問題で業績が悪化したのに伴い、撤退したのは〇九年だった。そのトヨタが早くも、「一四年か一五年にF1への再参戦を狙っている」(モータースポーツを取材するジャーナリスト)というのだ。「狙いは三つ。第一にF1人気が高い欧州での認知度を上げること、第二にブランドイメージをグローバルで確立すること、第三にハイブリッド車(HV)技術のPRだ」。  第一の欧・・・