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経済

復興事業に 便乗するイオン

噴出する「焼畑商法」への疑念

2013年5月号

 東日本大震災から二年以上が経過しながらも、遅々として復興事業が進まぬ被災地からまた一つ、奇妙な動きが伝わってきた。津波によって壊滅的な打撃を受けた岩手県釜石市に、流通大手のイオンが進出する。  去る三月八日に同社と釜石市が立地協定に調印した「イオンタウン釜石」の開業予定は、来春だ。建設予定地は釜石駅に近い一等地にある新日鐵住金釜石製鉄所の敷地(約二万九千平方メートル)で、延床面積は五万四千百五十五平方メートルにも及ぶ。近隣でみれば、三十万都市の盛岡市に二〇〇三年に進出した「イオンモール盛岡SC」の延床面積が九万九千七百九十五平方メートル、〇六年に開店した「イオンモール盛岡南SC」も同規模であることからすると、人口四万人足らずの釜石としてはかなりの大規模店といえよう。  近隣からは、「地元商店街への影響は強大なのに市からもイオンからも説明がない」(地元関係者)との不満が聞こえてくるが、彼らの怒りの背景はそればかりではない。進出予定地(東部地区)は、巨額の復興資金を投入して整備されるもので、ほかにも様々な優遇策を用意しての「招致」であるという。地元経済の復興も道半ばという状況・・・