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経済

《企業研究 》東芝

財界活動と社内抗争に明け暮れる「名門」

2013年6月号

 財界活動という言葉には、企業として「日本の行く末を憂い、行動する」という清らかな面とともに、老いた経営者の名誉欲と権力欲という醜なる部分の両面がある。一流企業のトップといえども人間である以上、欲から逃れることはできないが、それが経済界全体でバランスを欠いたり、企業本体に影響するようになれば経営者としての資質を問われるのは当然だ。

 東芝は日本の電機業界を背負ってきた名門企業であるとともに、財界活動で大きな足跡を残してきた。旧・経済団体連合会(現・日本経済団体連合会)の第二代会長の石坂泰三(一九五六~六八年)、第四代会長の土光敏夫(七四~八〇年)はともに東芝のトップを担った経済人だ。

 石坂はもともと戦前の逓信省に入省したが、若くして民間に転じ、戦後、五七年に東京芝浦電気(現・東芝)の会長に就任した。財界活動と東芝が連動した形だ。石坂は官僚統制への徹底した反発や鳩山一郎首相への退陣要求など政官にはっきりとモノを言う財界を構築し、「財界総理」と呼ばれた最初の経団連会長となった。土光敏夫は石川島播磨重工業(現・IHI)社長から請われて経営不振に陥・・・