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経済

KDDI「偽装表示」事件の深層

田中強権政治の「副作用」

2013年6月号

「LTE人口カバー率の偽装表示問題はケアレスミスではない。田中孝司社長の強権政治で社内が硬直化した副作用だ」。携帯電話業界に詳しいある総務省幹部はこう断言する。たしかにもはや「偽装表示」といっても仕方がない悪質な不祥事だ。  消費者庁は五月二十一日、景品表示法違反でKDDIに対し再発防止を求める措置命令を出した。スマートフォン向け高速データ通信サービス「LTE」の広告で、米アップル製の「iPhone5」に対応するエリアが、実際には人口比一四%だったのにもかかわらず、「二〇一二年度末に実人口カバー率約九六%に拡大」などと同社ホームページやカタログに記載していたからだ。  KDDIは「広告の制作過程で情報共有が徹底されず、誤った表示を見過ごしてしまった」と説明。同日付でこの問題の責任を取り、田中社長が報酬を三カ月間、二〇%返上すると発表したが、消費者の怒りが収まるはずはない。 「うそを言って取り付けた契約なんだから、無料解約できて当然だ」。ネット上にはこうしたユーザーの不満が広がる。現状、KDDIは不祥事の責任は認めながらも手数料なしの解約には応じていない。「順次エリアを・・・