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連載

日本の科学アラカルト34

工業素材として進化し続ける 金属利用研究

2013年6月号

 人類の進化の過程には道具や言葉の獲得などといったいくつものエポック・メーキングな出来事がある。いまだにその端緒が謎とされているのが鉄の獲得だ。隕石によってもたらされた説も有力だが、金属を手に入れたことで文明進歩が一気に加速したことは容易に想像できる。

 現在、人間は金属以外にも樹脂などの材料を発明し利用している。しかしいまだに金属から受ける恩恵は大きく、さまざまな場所で重要な役割を担っている。鉄や銅、アルミといった金属を加工したり、合金を作る研究は工学分野においていまだ主要なものといえる。

 利用度が高い金属のひとつはマグネシウム(Mg)だ。酸化物の形で地球上に多く存在するこの金属は、人間を含む動物にとっての必須ミネラルであり、植物の光合成に不可欠な物質として知られる一方、主に合金として工業素材にも利用されてきた。最大のメリットは他の金属元素と比較して軽いことだ。

 古くからMg合金は工業用途に使われてきたが、最近特に注目されている合金は日本の研究者によって開発された。熊本大学の河村能人教授が二〇〇一年に開発したものは・・・