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中米「新運河」建設を狙う中国

米国の「裏庭」を掻き乱す戦略

2013年7月号

 中米中央部に位置するニカラグアを横断し太平洋岸とカリブ海岸を結ぶ巨大運河の建設計画が突如決定し、米州を揺さぶり、マエルスク社をはじめとする世界の海運業界を驚かせている。ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領と契約を交わした工事請負会社が「香港ニカラグア運河発展投資有限公司」(HKND)という中国の民間企業だからだ。  この大事業が、米国と目と鼻の先の中米に「強烈な物理的プレゼンス」を構築したい中国の対米戦略と世界経済支配戦略に基づいているのを疑う者は少ない。中国は日本を抜いて、米国に次ぐ第二のパナマ運河利用国にのし上がったが、有事の際、米国の軍事管理下に置かれる同運河を使わないですむ選択肢を持とうとしているわけだ。  政権党サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)が過半数を占めるニカラグアの一院制国会は六月十三日、「運河・自由貿易地域・関連施設に関するニカラグア社会基盤・運輸特別法」を圧倒的多数で可決した。オルテガは同法を早々と発効させ、王靖HKND社長(四十歳)と運河、港湾、鉄道、送油管、自由貿易地域、国際空港などを総工費四百億ドルで建設する契約を結んだ。 「胡散臭い」香港企業が契約・・・