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連載

不運の名選手たち43

福見友子(柔道選手) 五輪で散った「ポスト・ヤワラ」
中村計

2013年7月号

 意図的な「フライング」だった。

「オリンピックで金メダルを獲ってきます!」

 二〇一二年五月、ロンドン五輪代表の最終選考会を兼ねた柔道全日本選抜体重別選手権大会でのことだ。女子四十八キロ級で優勝した福見友子は、勝利者インタビューで、まだ代表に決まったわけでもないのにそう宣言した。

「あれが四年間で、ちょっと成長した部分かもしれない」

 福見は「ヤワラちゃん」こと谷亮子に公式戦で唯一、二度勝った選手だった。

 最初は高校二年生のときだ。谷の反射神経のよさの裏をかいた。

「背負い投げにいくと見せかけて、相手が反応した瞬間に、大内刈りに切り替えた」

 それで「効果」を奪った。そのリードを最後まで守り、当時、十二
年間日本人に負けたことがなかった女王に無名の十六歳が判定勝ちを収めたのだ。

 しかし、この大金星で「ポスト・ヤワラ」に祭り上げられ、長いスランプに陥った。

「周りが期待する自分・・・