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社会・文化

東大医学部で出世しない灘高生

商人文化が生んだ孤高の進学校

2013年7月号

「灘高から東大医学部に進んだ人は出世しません」  東大病院で働く灘高校卒の医師はこう断言する。  西の雄、灘高は今春、東大理科III。類に二十七人の合格者を出した。開成高校は八人、筑波大附属駒場高校は七人。東のトップ2の合格者を合計しても灘高の半分程度だ。遡れば、東大の科類別入試が始まった一九六二年以降の四十年余りで灘高の理III。合格者は六百六十四人。二位のラ・サール高校(三百九人)を大きく引き離す。  石を投げれば灘高出身者に当たる状況だが、その中で東大医学部の教授になれた人間は驚くほど少ない。日本の医療界で隠然たる権力を持ちうる臨床系教授は、過去に三人(客員・特任を除く)。医師国家試験に出題される主要診療科に限れば、昨年一月、田中栄氏が整形外科教授に就任したのが初だ。 「灘の人間は人間的には幼稚で言いたいことを言ってしまう。そして、仲間割れをする」  灘高卒業生の一人は、出世できない理由をこう語った。 「負けじ魂」が時を経て結実  二〇〇九年の新型インフルエンザ騒動の際にある「事件」が起きた。厚生労働省の新型インフル担当・・・