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社会・文化

水「輸入」大国ニッポン

沖 大幹(東京大学生産技術研究所教授)

2013年8月号

―日本が直面している水問題とはなんですか。 
 この国が水に恵まれているという前提は幻想に過ぎない。平均降水量は世界的にみて多いが、本来は利用できる水が少ない国だ。古くから治水、利水によって使えるように変えてきた歴史がある。とかく悪役にされる戦後のダム建設も、利水という観点からみれば国民が受けた恩恵は大きい。関東でみた場合、飲料水についてはここ数十年の取り組みによって、渇水の危険性は極めて低くなっている。一方で、日本人が消費している水は国内の供給量を大きく上回っており、海外に依存している世界一の「水輸入大国」だ。

―どのくらいの量を海外に頼っているのでしょう。
 日本が輸入しているのは飲料水ではなく「食べる水」だ。カロリーベースで六〇%の食料を輸入している日本は、その食料を生産するための水を間接的に輸入している。水は究極的にローカルな資源であり、遠方に運ぶにはコストが見合わない。そのため、食料という形に変えて日本で必要な水を外国で確保している。「仮想水」という考え方で、日本は年間六百億~八百億トンの水を輸入してい・・・