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アラブ「民主化」を望まない米国

エジプト政変の知られざる「内幕」

2013年8月号

 大統領宮殿内のムルシ大統領にシシ国防相が迫った。「退任しなさい。さもなければ解任だ」。  軍部はこうして、「エジプト五千年の歴史始まって以来」の「民選大統領」を実力で解任した。明らかなクーデターである。しかしこれを日本のメディアはなぜか「事実上の」クーデターと呼んだ。確かに奇妙なクーデターである。首都カイロのタハリール広場には、リベラル勢力の呼び掛けで二年前の革命時の人出を上回る数十万人規模の民衆が集結し、軍の介入に快哉を叫んだのである。歴史的にあまり例のない珍現象を前に、各社の編集責任者は狼狽した。  しかし、この定義はいただけない。大体クーデターとは非合法的に、「事実上」の強権支配を目指して行われるものだ。「事実上でない」クーデターなど、ない。にも拘わらず何らかの枕言葉を要すると思われる光景がそこにはあった。苦しい表現の中で言いたかったことは、「形式的にはクーデターの構成要件を満たしているが、単純にクーデターと呼べない要素がある」ということであろう。  実際、ムルシ政権打倒を叫ぶ左派・リベラル派の陣営からは、「クーデターと呼ばないで」との声が巻き起こり、アラブ首・・・