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イタリア金融界の「深い闇」

中銀もバチカンも「疑惑だらけ」

2013年8月号

 経済危機にあえぐイタリアで、新たな時限爆弾が持ち上がった。ユーロ加盟直前に巨額のデリバティブ(金融派生商品)取引で債務の統計を誤魔化した疑惑が表面化したのに加えて、ローマ法王庁のマネー・ロンダリング(資金洗浄)にも捜査のメスが及んでいる。半島を覆う金融界の暗雲は、この国をさらに深い泥沼に導いている。 自家用ジェット機で大金を空輸  イタリア国民にとって、今夏の明るい話題は、今年三月に就任したフランシスコ法王である。七十六歳のローマ法王は、倹約の美徳を説き、高級車に乗る聖職者をいさめた。七月初旬には、アフリカ大陸からの難民が流れ込むランペドゥーサ島を訪れ、イスラム教徒も多い難民たちを感動させた。連日の活動は、イタリアの守護聖人、アッシジの聖フランチェスコを思わせ、法王ミサに足を運ぶ信徒を倍増させた。  奮闘の陰で、「バチカン金融の闇」は相変わらずだ。六月には、高位聖職者の一人、ヌンツィオ・スカラーノ容疑者が資金洗浄容疑で逮捕された。スカラーノは、五百ユーロ札を持ち歩くことから、「チンクエチェント(五百)猊下」と呼ばれる金融部門の大物。スイスから自家用・・・