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経済

中部電力「首都圏進出」の内幕

電力自由化の「骨抜き」が狙い

2013年9月号

 かつてこんなジョークがあった。アフリカ市場を開拓に来た靴のセールスマンが裸足の原住民をみて、「こんなところでは靴の需要はない」と気落ちして本社に報告した。ところが、次に来たライバル社のセールスマンは「巨大な潜在需要がある」と喜び勇んでリポートを送った。同じ事実でもみる人によって、正反対に評価されることを示している。

「電力会社間の本格競争がいよいよ始まる」と大手メディアが書き立てた、中部電力による三菱商事系の新電力、ダイヤモンドパワーの買収はまさにみる人によって同じ事実がまったく正反対にみえる実例だ。日本のほとんどの新聞、テレビは中部電が東京電力の営業エリアである首都圏市場に参入し、一九五一年に九電力(現在は沖縄電力含め十電力)体制ができて以来、初めて電力会社間の本格競争が始まると報じた。

 表面的にみれば、その通りだろう。だが、メディアの役割は当事者の真の狙いを探り出し、それが与える影響を分析することにある。その意味では日本のメディアは中部電の意図をまったく理解していない。中部電は首都圏でシェア競争を展開するのではなく、新電力を取り・・・