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捨てられたビンラディン

アラブの関心はもはや「群衆蜂起」へ

2011年6月号

 昨年十月号小誌予測に遠からず、ウサマ・ビンラディンは生存し、パキスタンの首都イスラマバード近郊、アボタバードの堅固かつ瀟洒な邸宅で隠遁生活を送っていたようだ。陸軍士官学校のある閑静な「高級住宅地」。退役将校が好んで別荘を建てるという土地柄からは多くの「疑問」が投げかけられた。
 いや、それは「疑問」というよりは、むしろ「茶番劇」に対する非難のヤジに近いと言ってよい。
「なぜ十年もの間、消息を掴むことができなかったのか(最近五年間はこの隠れ家にいたとも言われる)」「パキスタン側が隠していたのか、それとも軍情報機関(ISI)が政府首脳に知らせていなかったというのか」「米国は通報を受けながら泳がせていたのではないか」等々。

イスラム世界の「冷たい」反応


 真実は、国家機密のカーテンに閉ざされている。しかし、これまでに確認されている事実と、米国が証拠を示すことなく「こうである」と主張するストーリーを照らし合わせると、この一時代を築いた、類い稀なる「イスラム戦士」の実像と虚像が明らか・・・