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WORLD

《世界のキーパーソン》チャック・ヘーゲル ( 米国防長官)

「シリア介入」迷える米国の象徴

2013年9月号

「戦争の十年を終わらせる」ことをオバマ大統領に託された国防長官が突然、シリア内戦の舞台に立つ。名うての戦争嫌いが、テレビカメラに向かって「準備はできている」と宣言して以後、内戦の様相は一変した。

 米国は「スタンドオフ兵器」と通称される、遠距離から発射する精密誘導兵器が頼みで、地上軍投入は除外されている。攻撃目的を「二度と化学兵器を使わせないため」と、狭く限定しても、対象施設は十数カ所に及ぶ。

 三年目に入ったシリア内戦の死者は今夏、十万人を超えた。化学兵器使用による死亡が確認されたのは、そのほんの一部だ。仮にアサド政権側の化学兵器を封じ込めても、政府軍による自国民殺戮は今後も続くだろう。アサド政権を支持するロシア、中国、イランが、米欧の攻撃に態度を硬化して結束する可能性も高い。「戦況を改善できないまま、期待だけ高め、米国の介入がずるずる続くという、最悪の結果」(ブルッキングス研究所のダニエル・バイマン上級研究員)を予測する識者も多い。

 そんな難しい立場に、あえて身を置いたヘーゲルは、近年の米国防長官では、最も生々しく・・・