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経済

経団連の「製造業固執」は時代錯誤

ピーター・タスカ(英投資アナリスト)

2013年9月号

―経団連の存在意義があらためて問われています。
タスカ
 それは経団連が時代に合った役割、変化を見失い、時代遅れになってしまったということだろう。経団連は、いまの時代に求められるミッションは何かを決めなければならない。海外における日本の産業界の影響力拡大が目的なのか、それとも新興国市場を開放させることなのか。率いるトップにしても、一個人としての強い個性も確かに重要だが、それに依存して内向きの政治的発言力の大きさばかりを問う視点はもはや古い。時代の推移とともに、産業の主役も次々と変わっている。依然として特定の産業や利益集団を代表するだけならば、経団連不要論が出てくるのも当然だ。


―次期会長選が近付く経団連では「次も製造業から選ばれるべき」と発信していますが、どう思いますか。
タスカ
 全くのナンセンスだ。まず根本的に間違っているのは、いまの時代、製造業の利益が必ずしも経済全体の利益ではないということだ。日本のGDPに占める輸出比率は一五%に過ぎない。逆に、製造業の中には海外での売上比率が五〇%以上の企業もある。・・・