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政治

《罪深きはこの官僚 》一瀬 篤(厚生労働省研究開発振興課長)

ディオバン事件を 深刻化させた「小役人」

2013年9月号

「事態が深刻化したのは、厚労省の対応に問題があったから」

 年間で一千億円以上も売り上げたノバルティスファーマ社(ノ社)が販売する降圧剤ディオバンの臨床試験不正事件について、医療業界誌の記者はこう指摘する。メディアはデータ改竄に関与した大学関係者とノ社元社員の糾弾に懸命だが、それでは不十分なのだ。

 上司の医政局長原?壽と共に本件を担当しているのが、研究開発振興課長の一瀬篤だ。熊本大学医学部卒の一瀬は一九九九年八月に入省。現職には今年七月に着任した。医系技官の両氏は己の権限拡大のために陰謀を巡らすタイプではなく、「誠実に職務を遂行している」(厚労官僚)という。問題は彼らが「無能」(同前)なことにある。

 特に今回は健康、医薬、保険など複数の局が関係するため、調整が難しいのが実情。当然、一瀬には荷が重い。対応は後手に回り弥縫策に終始することとなるだろう。

 例えば捏造した臨床研究結果をノ社が宣伝に用いたことは「薬事法の広告違反に該当する可能性が高い」(法律家)。だが厚労省は
「薬事法で処分す・・・