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社会・文化

日本の「国徳」が上がったのか

ケント・E・カルダー (ジョンズ・ホプキンス大学教授)

2013年10月号

―このたび五輪開催地選考で、日本が圧勝した理由をどう考えますか。
 カルダー
 もちろん、見事にプロデュースされたプレゼンテーションを通じ、自国で五輪を開催したいという日本の明確な意思表明が前提ではあったが、二〇一一年の東日本大震災からの回復を支持する思いが一番だろう。さらに、日本と近隣アジア諸国との関係がこのところ緊張を伴っていたが、そうした国際関係において、日本が志向する安定と平和的な進展を歓迎し、支持したいという国際社会の気持ちの表れでもあるだろう。

 ―他方、国連常任理事国入りでは日本は否定されてきました。これは外国からの尊敬がないからでしょうか。
 カルダー
 日本が国連安保理の常任理事国になれないでいるのは、「徳」のなさを反映しているというよりは、「地域の反感」を伴ったパワー・ポリティクスの側面が強い。地域でのライバルを強化したくないという近隣諸国の思惑が影響しており、日本が国際社会から尊敬、信用を得ていないということとは違う。同じ問題はドイツもブラジルも抱えている。その理由から、米国の政治学者であるフランシ・・・