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経済

「崩落」秒読みの新興国債券

注目すべき世界金融不安の「発火点」

2013年10月号

「クレジットの超新星爆発」―債券王と呼ばれるビル・グロース氏が二月、こう題したリポートを出し話題を呼んだ。「長期的な信用の伸びの加速とそれに対する実体経済が追い付かず大きく乖離している」ということに、改めて警鐘を鳴らしたものである。債券王が、債券の果たす役割の限界に言及したということだ。  しかし、皮肉にも同氏率いる債券運用世界最大手パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は、その分析力を運用には活かせていない。同社が運用する投資信託「トータル・リターン・ファンド」はFRBの量的緩和(QE)縮小懸念が台頭した五月から八月まで解約が続き、債券価格の急落とともに運用資産額の一四%にあたる四百十億ドルを失った。同社にとって前例のない事態だ。空前の金融緩和に支えられた米国債バブルの崩壊は、同社の黄金時代の終わりを意味している。  だが、黄金時代を終えるのはPIMCOだけではない。米国の金利が上昇すれば、新興国債券の魅力はなくなり、資金は流出、通貨の下落を招く。衝撃が大きければ、単なる通貨安では済まされない。新たな世界金融危機の「発火点」ともなりかねない新興国債・・・