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経済

三井化学に 「ベトナムの悪夢」再来

政府肝いりの危険な巨大事業に邁進

2013年10月号

 去る七月上旬、ベトナム北部ニソンで同国二番目の製油所建設プロジェクトが着工した。これは、出光興産が日系石油企業として海外で主導する初のプロジェクトということでも注目された。この製油所には「石油化学プラント」も併設される計画だが、ここに合弁相手として参加するのが三井化学だ。  だが、進出に当たっては、三井化学では社内を二分する激論が交わされ、いまも出資比率引き上げなどの今後の事業計画をめぐって深刻な亀裂を生んでいるという。それはほかでもない、三井化学にとってこのベトナムは、忌まわしい記憶がつきまとう、まさに「鬼門」ともいえる地だからだ。そのベトナムへ満を持しての再進出には、同社としても周到な計画と相当程度の勝算があるのだろうと思いきや、どうやら内情は大きく異なるようだ。 十三年前の「大失態」がトラウマに  三井化学のベトナム再進出の舞台となるのは、首都ハノイから南に二百キロのタインホア省ニソン経済区で建設されるニソン石油精製所・石油化学コンプレックスだ。二〇一六年九月に完工、一七年第2四半期に商業運転開始を予定している。事業主体の「ニソン・リファ・・・