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WORLD

太平洋に背向ける米国

高まる日本への期待

2013年11月号特別リポート

 太平洋の「地政学地図」に大変動が起こるかもしれない。オバマ大統領の指導力低下は何もいまに始まったことではないが、シリア問題でロシアに主導権を奪われた弁解の声明(九月十日)で「われわれは世界の警察官になるべきではない」との致命的な発言を二回も繰り返してしまった。付け加えた「私は平和的解決優先を固く信じている」は万事を物語っている。シリアのアサド政権延命に決定的役割を果たした国連に反感を抱いたサウジアラビアは、国連安保理の非常任理事国に選出されたにもかかわらず就任を拒否し、情報機関トップのバンダル王子は「対米関係を大転換する」意向を明らかにした、と十月二十二日付のロイター通信は伝えた。

 対照的なのがアジア・太平洋地域である。ここには米国と中国という二人の警察官が存在するのだ。日本、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国は米中両国とさまざまな関係を持っている。各国とも安全保障面では米国と、経済面では中国と結び付いているうえ、日本、フィリピン、台湾、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、インドネシアは中国と領有権問題をかかえている。そこで、米国のリーダーシップに翳りが出・・・