三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

日本の科学アラカルト 157

リサイクルへの道筋を開く 高機能プラスチック分解技術

2023年9月号

 プラスチック製品は、私たちの身の回りに溢れている。ギリシャ語の「plastikos(プラスチコス)」を語源としており、これ自体は可塑性があるという意味の言葉だ。現在は石油などを原料とする人工樹脂一般を指す。
 プラスチックを人類が使うようになった歴史は浅い。最初に実用化されたのは十九世紀半ばに英国で発明されたセルロイド。セルロースを原料とするプラスチックで、かつてはキューピー人形の材料として使われた。二十世紀に入ると、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが続々と実用化された。
 プラ製品は金属と比較して軽い上に、一定の耐久性があるため普及したが、昨今では負の側面も指摘されている。海洋プラスチックやナノプラスチックと呼ばれる物質が環境に負荷を与えているためだ。これを解決するアプローチとして、自然環境下で分解される生分解性プラスチックの開発が進められている。こうした製品は一般に、耐久性が従来品より劣るケースもあるが、スーパーの買物袋などであれば容認できる。
 一方で、高い耐久性を持つことから重宝されているプラスチックがある。たとえ・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます