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連載

日本の科学アラカルト 39

将来の確実な実現に向けて進歩する太陽光発電技術研究

2013年11月号

 東日本大震災後にあれだけ盛り上がりを見せながら、太陽光発電の勢いはすっかり消え失せてしまった。各地のメガソーラー計画が次々と見直しを迫られており、まさに「震災の徒花」のような全量買い取り制度だけが存続している。

 問題は、現状の太陽光発電には経済合理性が伴っていないにもかかわらず、一部財界人と政治が結託する形で強引に導入したことにある。しかしこれは太陽光発電の将来を否定するものではない。風力発電などと同様に必要となる蓄電システムの技術が進歩するのと並行して、太陽光発電技術についても研究が進められている。

 今年七月、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の伊丹健一郎教授らのグループは、これまでになかったナノカーボン素材の開発に成功したことを発表した。新素材は「ワープド・ナノグラフェン(WNG)」と呼ばれる。

 従来のナノカーボン素材としては、炭素原子がサッカーボール状になった「フラーレン」や、チューブ状になった「カーボンナノチューブ」、シート状に二次元に広がった「グラフェン」が存在した。伊丹教授らのグループが今・・・