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経済

《クローズ・アップ》平野信行(全国銀行協会次期会長)

銀行界の信頼回復を託された「実務家」

2013年11月号

 全国銀行協会は、次期会長に三菱東京UFJ銀行(BTMU)の平野信行頭取を内定した。大手邦銀の国際的な地位が大きく向上した環境といえば、順風の船出も予想されるものの、みずほ銀行による反社会的勢力への融資事件という深刻な問題が浮上したさなかでの登板決定である。どうやら、天気晴朗なれども波高し、と表するのが妥当な雲行きだ。

 平野氏は、邦銀では最も国際競争力のあるBTMUのなかにあっても、「国際派の旗手」のような存在として知られている。ニューヨークなど海外経験は豊富であり、「実務にも長けている」(同行関係者)ことで銀行界での評価は高い。そんな平野氏の名前が銀行界に轟いたのは二〇〇八年秋。BTMUがモルガン・スタンレーへの九十億ドルの出資を実現したときだった。

 行内では「バランス型」と評価され、旧三菱銀出身者でありながら、統合した旧UFJ銀出身者への細かい配慮に定評がある。だが、その一方では、前任頭取の永易克典氏が「悪太郎」などと言われるほど剛腕だったのに比べると、見劣り感は否めないとみる向きも少なくない。海外に比べて、国内での人脈の弱さも指摘さ・・・