「ＧＤＰ成長率でも景気ウオッチャー調査でも、日本経済のファンダメンタルズは少しも好転していないじゃないか。日銀が金融緩和を強化するという姿勢を強めただけだろう？」 　二月十八日、日本銀行の黒田東彦総裁が発表した「貸し出し増加の支援資金供給枠を二倍にする」というサプライズで、日経平均株価が一気に五百円近くも急騰したのを受け、あるヘッジファンドの運用担当者がもらした反応である。 　この人物は、「従来の空売りを一部買い戻したにすぎず、日本株はまた戻り売りだ」と語っている。その理由を尋ねると、「円安による企業収益増加がアベノミクスの生命線だが、その円レートが今後、円高に転換するからだ。対ドルで九十円の大台も危なくなるのではないか」と漏らしている。 「これ以上の円安を期待するな」 　この読みを支える傍証はいくつもある。第一は、ゴールドマン・サックス前会長のジム・オニール氏が最近、「もうこれ以上の円安を日本は望むべきではない。他国が許さない」と発言し始めたことだ。オニール氏といえば、二〇一二年十一月二十日にいち早く「円売り・日本株買い」を最良の・・・