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経済

貿易大国ニッポンの「終焉」

佐藤 隆三(ニューヨーク大学名誉教授)

2014年3月号

 ―日本の経常収支の黒字額が減少の一途を辿っていますが、この先どのような未来が待っていますか。

 佐藤 国際貿易収支というのは、国力だけでなく、過去の歴史や将来の発展の可能性などを反映したもので、私自身は日本の経常収支の悪化について非常に憂慮している。我が国の経済は生産性の高い工業などの分野の収益を、農業などの低効率分野に回すことで成り立ってきた。しかし高度成長が終わった一九九〇年代以降、日本は海外の技術に改良を加えて再輸出するモデルが難しくなっている。新しい製品は直接韓国や中国で生産されるようになって、今後もこの傾向は続くだろう。

 ―戦後の成長を支えた加工貿易モデルは終わりを迎えつつありますか。
 佐藤 そもそもメーカーの生産拠点が海外に流出している。日本ではグローバル化として礼賛しているが、馬鹿げている。米国であれば生産拠点を海外に移すと社会から猛然と批判を受ける。日本は、雇用がなくなり生産性・・・