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経済

《企業研究 》東京ガス

エネルギー業界で孤立する「公家集団」

2014年4月号

 東京ガスの広瀬道明副社長の「名代」を名乗る同社幹部が、東京・銀座にあるJパワー(電源開発)の本社を訪ねてきたのは昨年秋のことだった。

「貴社にはこれまで目を掛けてきたつもりですが、いったいどういうお考えですか」

 態度は慇懃なものの、その権高な物言いには、彼我の格の違いを匂わす響きがあった。すなわち、我々は都市ガス最大手であり、首都圏の大半のガス供給を担っている、比べてあなた方は需要家を持たない卸発電事業者ではないか、身の程をわきまえなさい、という勧説である。

 いや、はっきり言えば、「俺たちの庭先を荒らすな!」という“恫喝”だった。

 その背景にあるのは、二〇一六年の電力小売り全面自由化を睨んだ首都圏の「エネルギー市場再編」だ。福島第一原子力発電所の事故債務に追われてキャッシュがない東京電力が、外部資本の導入による老朽火力発電所のリプレース(建て替え)を計画しているのは周知の通り。最大需要地の攻略へ向けて橋頭堡を築くことになる東電との提携には、他の電力会社のほか、ガス、石・・・