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連載

日本の科学アラカルト 44

進化する二酸化炭素回収技術 利用法も模索続く

2014年4月号

 生物にとってどんな物質が有用で、何が毒となるのか。太古の地球、大気は主に水素とヘリウムで、海は強い酸性だった。当時の地球上にはこの環境下で生きることができる原始生命が生活していたが、突如として悪夢が襲う。「酸素」という猛毒を排出する生命が誕生したのだ。時間と共に、酸素を出す生命が主流を占めるようになると、これを嫌う生命は徐々に淘汰されるようになった。「嫌気性」と呼ばれ、現在でも海中などで細々と暮らすこうした生物にとって、酸素を排出する生物の登場は、「環境破壊」に他ならなかった。  下って現代、地球上のヘゲモニーを握る人類にとって、大気中の毒と言われているものは多々ある。少し前であればフロンが敵視され、のちに二酸化炭素(CO2)が悪役となり、大気中を浮遊する流行の「PM2・5」も毒の一種だ。  代替ガスに切り替えることができるフロンと異なり、CO2については化石燃料を消費する現代人が排出することを避けられない。この気体が本当に人類の敵なのかには議論があるが、現在の潮流としてCO2排出削減は国際的コンセンサスだ。国際社会の一員としてはこれを無視することはできない。その中で、単・・・