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連載

皇室の風 70

宮殿の秘所「表御服所」
岩井 克己

2014年6月号

表御座所は、宮殿の「奥の院」である。宮殿西側に張り出した南北二棟からなり、天皇家の内輪の儀式・行事や天皇の執務、休憩、食事などにも使われる。宮内記者会の取材も入らず、間取りすら公表されていない。

 その表御座所にある西車寄近くからエレベーターで下に降りると、広大な地下階があり多くの部屋が並んでいる。ひと口に「御服所」と総称されるが、いくつもの納戸、倉庫や仕人部屋、天皇・皇后それぞれの浴室もある。きわめて限られた者しか立ち入れない?秘所?であり、その存在すら余り知られていない。

 地上階の「桂の間」の下に「御服手入れ所」がある。ここは文字通り天皇・皇后の衣装収納部屋だ。そして地上階の天皇専用の「御車
寄」の下にあるのが「表御服所」。実はここに「門外不出」の最重要物品や機密書類が秘蔵されている。

 五、六十坪。卓球台なら三台は並べられる部屋には絨毯が敷き詰められ、全ての壁を棚やキャビネットが埋め、天皇・皇后の儀式服、勲章や諸外国から贈られた多数の勲章のほか国会開会式の「おことば」、動静を細大もらさず記録した侍従日誌・・・