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「中東崩壊」オバマの大罪

イラクは国際テロ組織の「楽園」に

2014年7月号特別リポート

 国際テロと言われても、オウム真理教のサリン使用程度の事件と考えている日本人は決して少なくないようだ。ましてや、中東のイラクで国際テロリストが北部を事実上支配し、一部地域で徴税まで実施し始めたとのニュースにも、政治家が敏感な反応を示さないお伽話の国だ。が、事態はきわめて深刻である。

 いわゆる9・11米同時多発テロで三千人の生命がニューヨークのど真ん中で奪われてから九日目の九月二十日。ブッシュ大統領が上下両院本会議で、「すべての国、すべての地域は今こそ一つの決断を下さなければならない。我々につくか、テロリストにつくかのいずれかだ」と述べた瞬間、上下両院の議員全員がスタンディング・オベーションで応じた光景を思い出す必要がある。以来、国家でない国際テロリスト集団アルカーイダとイラクに対して米国が繰り広げた戦いに費やされた戦費は何兆ドルという天文学的巨額となり、イラクに五十万人から六十万人、米兵に四千五百人の犠牲者を出した。オバマ大統領はテロ指導者のビンラディンを二〇一一年五月に暗殺し、同年末にはイラクからの米軍撤退を完了し、まさに意気揚々だったではないか。
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