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経済

《クローズ・アップ 》福武總一郎(ベネッセホールディングス最高顧問)

個人情報漏洩問題の「真の責任者」

2014年8月号

 父親の福武哲彦氏が創業した福武書店を引き継ぎ、今や幼児教育から小、中、高校の受験教育、社会人の英語習得まで日本における『一大教育コンツェルン』となったベネッセに育てあげた。二代目だが立志伝中の人物といってもいいだろう。

 今の四十歳代、五十歳代に懐かしい響きのある「進研模試」は全国の高校生の過半が受ける民間版の『共通一次試験』のような影響力を持ち、進研ゼミは通信教育で圧倒的シェアを握った。進研ゼミで育った世代が親になれば、子供向けの「こどもちゃれんじ」といった幼児教育を手掛け、その卓抜なアイデアで通信教育の新しいジャンルを次々と開発してきた。

 他社の追随を許さない強さは受験生から始めた個人データの収集、分析、メンテナンスにあった。三歳でベネッセを始めれば、大学入試の十八歳まで個人データによって自社の商品に囲い込んでしまう手法は、単なるDMサービスを超えた日本発のビジネスモデルといえるだろう。

 そうしたスタイルを築く独創性は福武氏が生まれ育ち、ベネッセの本拠となった岡山という場所にも深く関係する。東京、大阪などの巨大・・・