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経済

《企業研究》味の素

経営者に恵まれない元「優良企業」

2014年8月号

 果たして逃した魚は大きかったのか、それとも......。伊藤雅俊社長ら味の素首脳陣がほのかに抱いていたであろう期待はあえなく、失望へと変わった。

 スイスに本拠を置く香料メーカー、ワイルド・フレーバーズを巡り、米穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)社との間で繰り広げてきた買収戦。その対決に七月初旬、「競り負けた」(味の素関係者)のだ。

 入札からはじまり、最後に味の素との一騎打ちを制したADMの発表によると、買収金額は現金払いで二十二億ユーロ(約三千億円)。そのほかワイルド社の債務約一億ユーロも引き継ぐ。当初十五億ユーロ(約二千四十億円)前後とみられていた買収価格は一連の争奪戦を経て最終的には一・五倍近くにも跳ね上がったことになる。


新たに独社へ「買収工作」の気配


 味の素の連結有利子負債は、今年三月末で一千四百十一億円。仮に買収資金三千億円を全額借り入れで賄うとすれば、これが四千四百十一億円へと膨れ上がる。それに対して、積み上げている・・・