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オバマが油を注ぐ「中東大炎上」

国際秩序と経済の「最悪リスク要因」

2014年9月号特別リポート

 ちょっと様子がおかしくなってきたのではないか。米地上戦闘部隊の投入は行わないと繰り返し約束してきたオバマ大統領とはニュアンスの異なる発言が飛び出しているのである。米共和党に属しながらリベラルで知られるヘーゲル国防長官が八月二十一日に国防総省内で記者団に対し、「イスラム国」を「これまで目にしたこともないような組織だ」と新しい認識を示し、野蛮な思想、極めて潤沢な資金、高度な軍事力を備えた強力な敵で、長期的な戦略を立てなければならないと述べた。今から三十五年前の一九七九年十二月にソ連軍十万人がアフガニスタンを侵略し、リベラル中のリベラルで知られたカーター大統領が一夜にして対ソ強硬論に変身したのが思い出される。ハト派の代表的な人物だっただけに、その反動だろうか。軍事費の急増、徴兵登録制の復活、モスクワオリンピックのボイコットなど全面対決に踏み切り、レーガン大統領にバトンを渡した。

 八月七日にオバマ大統領はイスラム国に対する限定的空爆に踏み切ったが、その目的はイラクにいる米国人の生命の保護、悲惨な弾圧を受けているヤジド派クルド人への人道的支援など戦争とは無関係であると繰・・・