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人民元は国際通貨になれない

「金融自由都市」香港を葬る中国

2014年10月号

 香港が大きく揺れている。きっかけは今年八月中国が伝えた一片の通告だ。「香港特別行政区行政長官の二〇一七年選挙は指名委員会の過半数の支持を得た候補者のみが立候補できる」。中国が今後も香港のトップを選ぶことが事実上、確定したことで、高度な自治と政治的自由を望む香港人の多くが激高した。中国にとって金融、貿易で世界への窓口を担ってきた香港は変質し、沈み始めた中国経済の起死回生策である人民元の国際化も危機に直面している。  一九九七年六月三十日に香港返還式典が開かれた香港コンベンション・アンド・エキシビションセンターは香港市民にとっては今なお感慨深い場所だ。だが、その場所から徒歩数分の距離にある香港を代表するホテル、グランド・ハイアットは今や香港人にとって忘れようのない屈辱を受けた場所となった。  北京から派遣され、そのホテルに滞在した李飛全国人民代表大会常務委員会副秘書長が、行政長官選挙を中国流の制限選挙にすることを明らかにしたうえで、「香港に与えた高度な自治とは行政事務の委任にすぎない」と公言したからだ。ホテルは自由な選挙を求める民主派のデモ隊に包囲され、李氏はホテルの外へ出る・・・