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社会・文化

病院では死ねない時代の到来

「野垂れ死に」老人が急増する東京

2014年10月号

「『地域包括ケア』で、関東の医療崩壊はとどめを刺されるでしょう。このままでは、関東は在宅で野垂れ死にする高齢者で溢れます」  都内で医療制度を研究する大学教授は危機感を募らせる。  地域包括ケアとは、厚労省肝いりの政策だ。その目的は、約八百万人の団塊世代が七十五歳以上となる二〇二五年をめどに、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進」(厚労省ホームページ)することらしい。具体的には、市町村が主体となり、「地域包括支援センター」を設置し、医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるように調整する。在宅医療に力を入れること、NPOやボランティアなど行政以外も参加することになっている。  高齢者が、住み慣れた自宅で余生を過ごせるように配慮する―。確かにお題目は立派だ。しかし、「在宅で老人医療を」というスローガンは、多くの専門家にとって単なるフィクションにしか映らない。なぜなら、この政策の立案者たちが、医療の・・・