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社会・文化

原発の「本当のコスト」が見えてきた

崩壊する「安い電力」という虚構

2014年12月号

「安全性か、それとも経済効率か」で国論を二分する原子力発電問題。十一月七日には、福島原子力発電所(以下原発)事故後に制定した新規制基準の適合性審査を受けている全国十三原発の先陣を切って、鹿児島県の伊藤祐一郎知事が九州電力・川内原発の再稼働に同意すると表明した。伊藤知事は記者会見で「諸般の事情を勘案して、再稼働はやむを得ない」と釈明したが、「諸般の事情」に電力料金問題が含まれるのは間違いない。  事実、川内原発の再稼働同意を受けた政府関係者は「高コストな火力発電の比率が下がり、原発停止後に相次いだ電気料金の値上げが食い止められる」と期待する。が、本当にそうなのか。最近になって「原子力発電は低コスト」という「神話」を覆す事実が明らかになってきた。しかもその発信源は、他ならぬ電力業界だ。 陸上風力発電より割高  一四年九月、電気事業連合会(電事連)の定例会見で八木誠会長(関西電力社長)は「原子力発電を民間企業が担っていくには、費用が確実に回収されることが大事。そのためにも官の支援をお願いしたい」と訴えた。なかでも電事連が切望しているのは、経済産業省の総合資源エ・・・