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連載

日本の科学アラカルト 52

高齢化社会で期待集まる 「人工筋肉」の開発最前線

2014年12月号

 人間をはじめとする動物の身体は緻密に計算された「機械」だ。あらゆるセンサーが備わり、その情報を処理する脳という高性能コンピューターで制御される。ただ、情報処理をするという点だけなら、技術進歩によって本当の機械にも同等のことが可能になる将来が訪れるだろう。人間はそれらの命令を元に身体を動かし、あらゆる運動や作業をこなすことができる。  動くということを可能にしているのは、形態を維持する骨格と骨格筋だ。動物の身体の筋肉は細い繊維の束でありながら、わずかなエネルギーで大きな出力を出す。機械を動かそうとすれば、モーターやエンジンが使用されることが大半だが、それらでは真似できないスムーズで複雑な動きを可能にしているのは筋肉に依るところが大きい。  先天的、後天的にかかわらず、何らかの理由で筋肉、もしくは骨格も含めて損傷してしまい治癒が望めない場合に代替する「人工筋肉」の研究は昔から行われている。これは老化などの要因で筋力が衰えた際に、それを補助する役目も期待されている。  岡山大学の研究グループは昨年、地元中小企業や韓国のサムスン電子グループなどと共同で極小の人工筋肉の開発に・・・