三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

《土着権力の研究》熊本県 村上寅美

前時代的「土建利権」の仕切り役

2015年2月号

 出る杭は打たれる日本社会の中でも、熊本は特にその傾向が強いと、ある地元財界人が語る。

「福岡と鹿児島に挟まれて埋没したのは、やっかみが強くて代表的企業も育たない痩せた土壌になったからだ」

 結果として、県内で力を持つのは役所と県議会という古臭い体質が九州の中でも突出して残る。四月の統一地方選で改選を控える熊本県議会の現在の勢力図は、与党自民党が三十二議席(全四十五議席)を占める。その絶対与党、自民党県議団の団長を務める熊本の権力者が村上寅美だ。村上は他を圧倒する数的優位を背景にして、知事を歯牙にもかけず、熊本県政を牛耳っている。

放置される「指名競争入札」

 一九三九年六月生まれの村上は今年七十六歳になる。八七年に県議会に初当選後、七期を務め、二〇〇〇年には副議長、〇七年には議長も務めた。村上率いる県会自民党にとって、最優先課題は土建利権だ。九州他県でも類を見ない時代錯誤の土建行政が行われ、談合の噂も絶えない。

 〇八年の県知事選で、村上が中心となって担ぎ上げた・・・