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政治

拉致問題「諦めた」安倍官邸

交渉「破綻」の責任の所在

2015年5月号

「ご家族がお子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない」  昨年五月にスウェーデンのストックホルムで北朝鮮側と拉致被害者の再調査について合意した当時、安倍晋三首相は拉致被害者の家族にこう決意を語った。あれから一年を迎えるが、事態は一向に進展していない。実は「官邸はすでに諦めている」(外務省幹部)というが、この間一体何が行われて、どこで道を誤ったのか。 無理難題を求めて交渉を放棄 「日本は北朝鮮側にたやすくダマされた。小野課長を振り回した北側に敗北した」  外務省関係者はこう漏らした。外務省の小野啓一北東アジア課長が動き始めたのは二〇一三年末頃のことだった。同年五月の、飯島勲内閣官房参与による訪朝が失敗に終わった後から独自ルートを使って上海や北京、ベトナムなどで北側と接触した。小野課長が接触している人物は「ミスターX」。〇二年の小泉首相訪朝時に窓口を務めた田中均アジア大洋州局長(当時)の交渉相手と同じ通称だが、別人物だ。しかし、「小野課長のミスターXは、田中と比べて北朝鮮内での力を持っていなかった」(前出外務省幹部)。 ・・・