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政治

《政界スキャン》

政権とメディア「子供じみた」関係

2015年5月号

 岸信介元首相が娘洋子の見合い相手に、毎日新聞記者だった安倍晋太郎を選んだのは、

「これからの時代はジャーナリストがいいだろう」

 と漏らしたのを、同じ山口県出身の毎日の政治記者が聞きつけ、同郷の後輩を紹介したのが縁である。晋太郎の亡父が、第二次大戦中の翼賛選挙で東条英機ら軍閥を公然と批判しながら当選した安倍寛元衆院議員だった血筋も、岸を乗り気にさせた。

 このエピソードの勘所は、先に安倍の家柄や人物があったのではなく、まず最高権力を狙う岸が、一番近い身内にメディア出身者を抱え込もうと発想した点にある。A級戦犯容疑者として獄中にあっても、米ソ冷戦をにらみつつ、国家再建の想をめぐらしていた岸は、民主主義時代の政治運営に、メディア感覚は欠かせないと見抜いていたのだ。晋太郎は退職し、岸の外相・首相秘書官を務めてから政界に出た。

 岸の後を襲った池田勇人元首相の首席秘書官は、元西日本新聞記者の伊藤昌哉である。池田は元来、大酒飲みで気が短く、言動も奔放だったが、周囲は安保騒動で荒れた民心を経済成長路線へ切り替・・・