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経済

トヨタ章一郎の過剰な「世界一願望」

院政老人の「名誉欲」が招く危機

2015年6月号

「世界一にならないとダメだ。これは豊田家の意志である」。またぞろ性懲りもなくメキシコと中国への工場新設を発表したトヨタ自動車。「販売台数世界一」を維持するための無謀な増産戦略―。背後から糸を引くのが同社のオーナーで名誉会長でもある豊田章一郎だ。すでに一線を退き、本来ならば大所高所から経営を見守るべき老経営者の飽くなき名誉欲が、再びトヨタを「際限なき肥大化」という危機に陥れようとしている。 再び無謀な生産増強へ 「意志ある踊り場から、実践する段階に移った」。豊田章男社長は二〇一五年五月八日に開いた一五年三月期決算会見で、そう宣言した。これに先立つ四月十五日、トヨタはメキシコと中国に新工場を建設すると発表。自ら封印した工場新設を解禁し、メキシコ・グアナファト州に年産二十万台、中国・広州市には同十万台の工場を新設する。投資総額は約一千七百億円を見込む。 「ただ独フォルクスワーゲン(VW)に勝つためだけの工場新設だ」と、トヨタの内情に詳しい専門紙記者は打ち明ける。トヨタは過去三年にわたって暦年での年間販売台数世界一を達成した。が、VWの増産でトヨタとの格差が急速・・・