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WORLD

「アサド後」を狙うヒズボラ

シリア内「シーア派国家」実現に着々

2015年7月号

 世界は「アサド後」に向けて動き始めたようだ。五月末、イスラエルのハレヴィ元モサド長官は同国の軍事戦略研究機関であるフィッシャー航空宇宙戦略研究所の年次安全保障会議で講演し、「アサド政権がいつ崩壊しても驚かない」と述べた。同政権とヒズボラは間もなく失地回復のために反撃し、それなりの成果を収めるであろうが、もはや「現在の流れを変えることにはならない」というのだ。  このような認識は、アサド政権最大の後ろ盾であるロシアを動かしている。六月十八日、プーチン大統領は公式訪問したサウジアラビアのムハンマド副皇太子兼国防相と会談、この結果、サウジアラビアに十六基の原子炉を建設する「原子力の平和利用に関する協定」など多くの協力協定が調印された。  この動きそのものは、覇権を画策するイランに甘い態度を取るオバマ政権へのサウジ政府のいわば捨身の当てつけだが、サウジ側は今回の訪問を大成功と位置付けており、アサド抜きでのシリア問題の平和解決を目指すスンニ派世界の盟主のメッセージは伝わったようだ。国土の約四分の一しか支配していないアサド政権が樽爆弾による住民虐殺など暴虐の限りをつくすことができるの・・・