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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》 文部科学省「13階」

「新国立問題」迷走の諸悪の根源

2015年8月号

 東京・虎ノ門。昭和八年(一九三三年)に建てられた文部科学省の旧庁舎が交差点に面するように佇む。残されたこの庁舎の裏にそびえる中央合同庁舎第七号館東館。三十三階建てのビルの十八階までが文科省のエリアであり、十三階に、渦中のスポーツ・青少年局やオリンピック・パラリンピック室が入居している。

 新国立競技場の総工費が決まり世論の批判が吹き荒れていた七月中旬、霞が関を見渡す十三階の一室で文科省幹部の一人は涼しい顔でこう言い放った。

「総工費が二千五百二十億円に膨れ上がったといっても最終的にtoto(スポーツ振興くじ)の売り上げを回せば済む話だ。財源は心配していない」

 十七日になって安倍晋三首相が計画案を白紙撤回したため、総工費は削られる見通しになった。しかし、この幹部の発言には、文科省の今回の問題における責任意識の希薄さと、この国のスポーツ行政を司る部局としての罪深さが端的に表れている。

 新国立問題の責任の所在を巡っては、さまざまな報道が溢れている。相変わらず放言し続けている森喜朗元首相が、二〇一九年・・・