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政治

安倍政権こそ「決められない政治」

井上寿一(学習院大学学長)

2015年8月号

 ―「決められない政治」と言われた民主党政権から二年以上経過しましたが安倍政権の現状をどう捉えますか。

 井上 現在行われている安保法案の審議の過程を見る限り、現政権下で「決められる政治」が実現できたとはいえない。個人的には憲法改正に慎重な立場だが、安倍政権が本来目指していることを実現するためには改憲を訴えるのが筋だった。国会の発議はできても、その後の国民投票で過半数をとる自信が持てず、集団的自衛権行使のために提出してきたのが今の法案だ。これを強引に進めようとしているだけで、何かを決められたわけではない。


 ―安保法案は強いリーダーシップで作られたものではないのですか。

 井上 改憲を放棄して、それでも集団的自衛権を行使するために外務、防衛を中心とした官僚に「できることをやれ」と預けた結果だ。官僚というのは法的整合性に人一倍気を使う人種。なんとか応えようと、何本も法案を束ねた・・・