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経済

《クローズ・アップ》 室町正志(東芝会長兼社長)

「粉飾決算」の膿を出し切れるのか

2015年8月号

 日本を代表する名門企業、東芝の巨額粉飾決算問題の深い霧が晴れないなかで、「暫定的」(東芝)に社長を兼務することとなった。今回、責任を取って辞任する直近三代の社長、西田厚聰、佐々木則夫、田中久雄と同じ責任を本来、負うべきはずだが、三人の辞任と社内取締役十二人のうち三分の二が引責辞任するという緊急事態のなかで、就任することになった。要は社長の椅子に座るべき人物がいなくなったという事情である。

 もともとは東芝の屋台骨の半導体部門で実績をあげ、注目された人物だ。一九八〇年代から九〇年代にかけ、世界を席巻した日本の半導体産業はサムスン電子や台湾勢に追いつかれ、あっという間に総崩れ状態となった。そのなかで、メモリーで生き残ったのはフラッシュメモリーに集中し、研究開発で常に先行、リスクも厭わない積極的な設備投資を続けた東芝とDRAMに特化したエルピーダメモリの二社だけになった。

 日立製作所、富士通、NECなど負け組との格差はやはり研究開発力と投資の大胆さだった。それを一貫して率いてきた。当然ながら社長の最有力候補だったが、不運にも社長レースの最終局面・・・