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連載

続・不養生のすすめ56

トランス脂肪酸の害
柴田 博

2015年8月号

 最近、店頭からバターの姿が消えている。あっても、高価な特殊なバターなので、庶民の懐にとって大きな打撃である。一部のマスコミは生産地の天候不順により、牛の飼料が不足しているためと報道している。しかし、筆者は、これは間違いだろうと思っている。同じように、牛乳から作られるチーズにはこの不足がみられないからだ。バターにのみ不足が認められる原因は、原料である牛乳の不足では説明がつかない。

 かなり以前から、マーガリンなどの硬化油にふくまれるトランス脂肪酸の害が広く知られるようになり、売れ行きが低下しているのである。デンマーク、スイス、オーストリアでは、油脂百グラムにふくまれるトランス脂肪酸の量が二グラム未満になるよう規制している。二〇〇三年のWHO/FAOレポートは摂取総カロリーの一パーセント未満にトランス脂肪酸を抑えることを勧告している。これも、ほとんど同じ趣旨である。

 アメリカの食品医薬品局(FDA)は、二〇一八年六月以降、原則としてトランス脂肪酸を多くふくむ硬化油の発売を禁止することを六月十六日に発表した。バターが店頭から姿を消し始めたのはこ・・・