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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》事故だらけの「JR」

消え失せた鉄道の「安心・安全」

2015年9月号

 日本の鉄道は世界の中でも類を見ない特殊な進化を遂げてきた。狭い国土の中で、都市に集中する人間をいかに効率よく輸送するかを突き詰めた結果、外国人が驚く定時運行率を実現した。時速二百八十五キロで走行する高速鉄道を、三分おきに運行できる芸当を持つ国はほかにはない。

 しかし、世界一の正確さと安全性を誇ってきた鉄道への信頼が、ガラガラと音を立てるように崩れている。全国をカバーするJR各社で事故やトラブルが相次ぎ、巻き込まれた利用者の怨嗟の声が渦を巻いているようだ。

 果たして、事故の連続は偶然の産物ではなかった。JRの旧態依然とした体質と現場劣化の当然の帰結として起きたものであり、事故は今後も続き、乗客の命を奪う大惨事が起きる可能性がいや増す。


ボルトを軽視する致命的ミス


 八月二十二日午後、東京都中野区内のJR東線路敷地に設置された通信用ケーブルのカバー付近から出火。火はすぐに消し止められたが、この影響で中央線快速が約一時間半にわたり運転を見合わせ、約二万五千人の足・・・