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経済

《企業研究》三菱重工業

技術の信用ガタ落ちの「老朽巨艦」

2015年9月号

 損して得取れ―は古から伝わるビジネスの要諦。英語にも「Sometimes the best gain is to lose.(時には損することが最上の利益だ)」といった諺があるほどだ。が、こう損ばかり出していては洒落にもなるまい。

 三菱重工業が客船事業でこの二年間に四度目となる特別損失計上を強いられそうな情勢だ。九月に予定していた大型客船の納入がここにきて延期を余儀なくされたためだ。昨年十月、当初の引き渡し時期だった今年三月を九月に先送りしたのに続く再延期。新たな納入時期は「未定」(関係者)としているが、これにより通常の船舶建造の倍近い約四千人を投入してきた人件費などのコストが一段とかさむ。発注先との間で、違約金などが発生するリスクも捨て切れない。

 この客船建造プロジェクトを巡って三菱重工では「度重なる設計変更や客室の仕様見直し」(幹部)などのため、二〇一四年三月期に六百四十一億円の特損を計上した。さらに同十月と一五年五月にもそれぞれ三百九十八億円、二百九十七億円の追加損失を出し、これまでに計上を迫られた特損の総額は、すでに受注額一千億・・・